あごのたるみとマリオネットラインの原因(顔の下半分の老化)

雑誌D&PSの2025年3月号に掲載された、私のコラム全文です。

皮膚のたるみにはさまざまな原因がありますが、なかでも脂肪区画と支持靭帯は重要です。部位でいえば、中顔面の加齢変化への対応が重要です。中顔面は、顔全体の老化の進み方を見極める大切な手がかりです。ここをどう引き上げ、下がった頬部脂肪体などをどう改善するかを考えます。引き上げる方向は、斜め方向だけでなく、前方へのベクトルをどう設定するかも重要になります。

浅い脂肪区画は、眼窩下脂肪、内側頬部脂肪、鼻唇部脂肪、中央頬部脂肪、外側頬部脂肪、上部ジョール脂肪、下部ジョール脂肪などに分かれます。特に注目したいのは、内側頬部、鼻唇部、中央頬部、上部・下部ジョールの脂肪です。中顔面の深い脂肪区画には、SOOFと呼ばれる内側眼輪筋下脂肪、深部内側頬部脂肪、頬脂肪体があります。頬脂肪体は筋肉の層より下にあり、バッカルファットとも呼ばれます。以前は、口の中を切開して取り除く手術も行っていましたが、現在は行っていません。

図1.顔の浅い脂肪区画と、支持靭帯との位置関係。出典:Retaining ligaments of the face: review of anatomy and clinical applications, Mohammed S. Alghoul, M. Codner, Aesthetic Surgery Journal 1 August 2013, DOI:10.1177/1090820X13495405.

ジョールが生じる仕組み

ジョールは、顔全体のSMAS層に代表される密な組織が緩み、中顔面の脂肪区画が下方へ移動し、ボリュームが下に偏ることで生じます。脂肪区画自体が下がる場合もあれば、下顎隔壁が緩むことで生じる場合もあります。脂肪区画が下方へ移動したタイプでは、頬骨の下のくぼみがより目立ちます。

ジョールでは、広頸筋より浅い面が下降しています。広頸筋より深い部分は、あまり下がっていません。皮膚が伸びるだけでなく、皮下組織も余ります。以前は、下顎靭帯が骨から皮膚へ強く付着しているために、ジョールやマリオネットラインができ、ジョールの前縁がそのままマリオネットラインになると考えられていました。

図2.咬筋前隙、ジョール、口唇下顎溝。咬筋前隙の前方の境界。出典:Surgical Anatomy of the Lower Face: The Premasseter Space, the Jowl, and the Labiomandibular Fold, Bryan C Mendelson ほか, April 2008 Aesthetic Plastic Surgery 32(2):185-95, DOI:10.1007/s00266-007-9060-3.

図3.上部・下部ジョール区画の下垂。下顎隔壁の緩みや離開によるジョールの形成。出典:Getting Better Results in Facelifting, Rohrich RJ ほか, Plastic and Reconstructive surgery. Global Open, 27 Jun 2019, 7(6):e2270, https://doi.org/10.1097/gox.0000000000002270.

マリオネットラインができる理由

マリオネットラインの大きな原因は、その線を境に上下の皮膚組織の性質が異なることです。加齢変化の程度が違うため、しわが生じます。この部分には複数の筋肉が複雑に関わり、線の上下、内側・外側で組織の変化も異なります。その構造を正確に理解したうえで、施術する必要があります。

口角下制筋(DAO)とオトガイ筋は、加齢とともに作用が強まります。顔の下部のラインに沿う筋肉は、多くが下方に起始を持つため、緊張が強いと顔を下へ引きます。オトガイ筋とDAOの緊張が強いと、マリオネットラインが下がった印象になり、その内側にくぼんだような段差が生じます。

老化の大きな流れは、SMAS層が緩み、それに伴って脂肪区画が移動することです。しかし、皮下層の皮膚支帯(retinacular cutis)も重要です。最近の論文では、ジョールが最もふくらむ位置は、下顎隔壁の後端の上に一致するとされています。下顎靭帯が終わる部分が、最も下がったジョールになるという意味です。組織学的には、皮膚支帯の線維が最も長い部位でもあります。この論文では、広頸筋より深い構造はジョールのボリュームに寄与しないとしています。マイクロCTで周囲を調べると、筋肉は骨に付着していますが、そこから皮膚へは硬い靭帯ではなく、密な皮膚支帯と疎な皮膚支帯が連なっていました。この構造により、開口時に皮膚が滑ると説明されています。下顎靭帯の深部1/3は、広頸筋、下唇下制筋(DLI)、DAOなどとつながり、骨の近くまで付着します。一方、皮膚側は、骨から皮膚までを結ぶ真の靭帯ではなく、密な皮膚支帯で構成されています。

図4.外科解剖の再検討。下顎周囲の各領域が、開口時にどう動くかを示しています。咬筋前隙(青)では、広頸筋が咬筋の上を滑り、皮膚がさらに滑る必要はありません。下顎靭帯(黄)では、広頸筋・DLI・DAOが下顎に共通して付着する部位で、皮膚が骨と筋の複合体の上を滑る必要があります。口周囲の癒着部(赤)では、下顎、下唇の筋肉、皮膚が一体で動き、相互の位置関係を保ちます。出典:The Surgical Anatomy of the Jowl and the Mandibular Ligament Reassessed, Minelli L ほか, Aesthetic Plastic Surgery, 01 Sep 2022, 47(1):170-180, https://doi.org/10.1007/s00266-022-02996-3.

(次号に続く)

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執筆:ドンアン中心クリニック 医師

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