額のしわとまぶたのたるみができる理由(EBDの進化Ⅷ)
雑誌D&PSの2025年1月号に掲載された、私のコラム全文です。
額や目元に、老化のサインが早く現れる理由
顔の変化にあまり敏感ではない方、たとえば外見にさほど関心のない中高年の男性でも、気づく変化があります。まぶたのたるみ、額や眉間のしわ、目の下のしわや脂肪のふくらみ、くぼみなどです。解剖学的にみると、目の周りは顔の中でも特に薄いため、加齢による変化が早く現れます。
Sasaki, Gordonらの「Fractional CO₂ Laser Resurfacing of Photoaged Facial and Non-facial Skin : Histologic and Clinical Results and Side Effects」によると、皮膚の厚さは額が1.17㎜、頬が1.42㎜なのに対し、まぶたはわずか0.34㎜(表皮0.13㎜、真皮0.215㎜)です。
まぶたは、真皮のコラーゲンやヒアルロン酸が減少し、皮膚の変性が進む加齢変化が、特に大きく現れる部位です。老化した皮膚では、真皮のコラーゲンマトリックスが断片化し、構造が損なわれ、線維芽細胞の機能が低下します。断片化を起こすのは、マトリックスメタロプロテアーゼです。線維芽細胞は、断片化したコラーゲンに付着しても、十分にコラーゲンをつくれなくなります。機能が低下した細胞は、コラーゲンをつくる量を減らし、分解酵素を多くつくります。そのため、コラーゲンが大きく減少した後は、老化がさらに進む悪循環に陥ります。
全体として、眉が徐々に下がり、ボリュームの減少とともに眼窩側へ落ち込みます。眼窩の外側の縁を覆う皮膚にしわが寄り、目尻側を覆うようなたるみ(temporal hooding)が目立ちます。眉の内側⅔は骨膜に比較的しっかり付着しているのに対し、外側⅓はそうではないことも関係します。眼瞼皮膚弛緩症の原因には、重力、ボリュームの減少、皮膚の弾力低下、結合組織の変性などがあり、リンパ浮腫の関与も考えられています。
まぶたの皮膚が変性しても、眼輪筋の筋線維の大きさは変わらず、保たれています。眼瞼皮膚弛緩症では、まぶたの見える部分が狭くなり、まつ毛の上に余った皮膚が、まつ毛を下向きに押します。眼瞼挙筋が下垂すると、上まぶたの皮膚もその上に垂れ下がります。さらに、中央の腱膜前脂肪が減少すると、溝が深く、上方へ広がり、上まぶたのくぼみが目立つようになります。
図1.上まぶたの断面。出典: https://www.ophthalmologyreview.org/bcsc-fundamentals/eyelid-anatomy.
額のしわ、眉やまぶたの下垂が生じる仕組み
額・眉・まぶたは、加齢で緩むと重力の影響を受けやすくなります。前頭筋が下がる眉を持ち上げようと働き、その結果、額に横じわができます。美容医療を受ける大きな理由の一つである、眉間のしわを考えてみましょう。眉を引き下げる筋肉には、内側の斜頭と外側の横頭を持つ皺眉筋、鼻根筋、眼輪筋、眉毛下制筋があります。
この部位を動かすのは、顔面神経(第Ⅶ脳神経)の枝で、表情筋に沿って走っています。頬骨弓を越える際に4〜8本に分かれ、大きく三つの経路を取ります。上方の経路は側頭頭頂筋膜内を通って前頭筋へ向かい、その下面に入ります。最も下の枝は眼輪筋、中央の枝は眼輪筋の上外側と皺眉筋を支配します。頬骨枝・頬筋枝につながるangular nerveは、大頬骨筋の下から現れ、皺眉筋の内側斜頭、鼻根筋、眉毛下制筋など、内側の下制筋群を支配します。
運動神経が表情筋と並行して走るのに対し、三叉神経(第Ⅴ脳神経)から出る感覚神経は、下制筋の近くにある孔から出て、筋群を垂直に通過します。筋を貫いた後は、軟部組織と並行して走ります。
眉の下垂は、内側と外側を分けて考えるほうが有用です。内側には、眉毛下制筋、鼻根筋、眼輪筋の作用が大きく関わります。外側には、眼輪筋や鼻根筋の横方向の作用に加え、まぶたの重さ、眉の脂肪層、額の軟部組織などが影響します。
眼輪筋は、目を閉じるうえで最も重要な筋肉で、前頭筋などの表情筋とともに、第7脳神経である顔面神経に支配されます。瞼板上の部分、眼窩隔膜上の部分、眼窩の外縁の骨を覆う部分の三つに分かれます。目を開ける上眼瞼挙筋は、動眼神経(第3脳神経)の支配を受けます。瞼板の付着位置と、そこから伸びる線維が眼輪筋を通って皮膚に付く位置によって、二重の位置が決まります。
図2.眉の周囲の筋肉。出典: https://www.ophthalmologyreview.org/bcsc-fundamentals/eyelid-anatomy.
眼窩隔膜は、眼窩の縁から始まる薄い線維性結合組織です。韓国人を含む東アジア人では、多くの場合、眼瞼挙筋の筋膜に付着しています。加齢で隔膜が薄く伸び、弱くなると、眼窩脂肪がまぶたのほうへ突出します。目元の老化には、骨の変化、軟部組織の減少、組織の下垂、皮膚の変化が関わります。まぶたの緩み、上まぶたや眉の下垂、涙腺の突出なども、その一部です。
皮膚の老化は顔全体で起こりますが、最も目立つのは目の周りです。コラーゲンが減ると、弾力を失って薄くなり、しわが増えます。こうした変化には、紫外線や喫煙などの外的要因と、体内の加齢変化の両方が関わっています。
Glasgold, Markらの「Volumetric Rejuvenation of the Periorbital Region」に掲載された、同じ女性を37年の間隔で撮影した写真では、顔が卵型から平坦な形へと変わっています。若い頃の目元は横に長く、ふっくらしており、眼窩の骨の輪郭は目立ちません。肌に弾力があり、上まぶたの溝もほとんど見えません。しかし加齢で額の下やこめかみがくぼみ、影ができると、上まぶたのふくらみが失われ、溝が深くなります。
Lambrosの「Volumizing the Brow with Hyaluronic Acid Fillers」では、21歳と64歳の写真が比較されています。若い頃は横に長く、ふっくらした目元だったものが、年齢とともに丸く短い印象へ変わっています。45歳の女性のまぶたの手術前後の写真では、余った皮膚と脂肪を取り除くと、もともとくぼんでいた目元が、かえって悪化して見えました。一方、局所麻酔薬を注入した後は、丸く短い印象の目元が、横に長くふっくらした、若々しい印象へ変わっていることがわかります。
目元の骨・脂肪・皮膚は、どう変化する?
目元の骨の加齢変化は、リモデリングによって眼窩の空間が広がることで生じます。Pessaは、Lambrosの仮説を検証した「An Algorithm of Facial Aging : Verification of Lambros's Theory by Three-dimensional Stereolithography, with Reference to the Pathogenesis of Midfacial Aging, Scleral Show, and the Lateral Suborbital Trough Deformity」で、眼窩が大きく、上下に長くなり、上内側と下外側の輪郭に波状の変化が起こると記載しました。
眼窩上内側の曲面の変化は、上まぶた内側の脂肪の増加に影響します。また、骨の変化によって眉の軟部組織が眼窩側へ下がり、眉の下垂や外側のたるみが生じます。眼窩の骨がリモデリングで広がると、上まぶたの溝が深くなり、目のくぼみやまぶたの下垂につながります。
Pessaらは、男性30人の骨格を三つの年齢群に分けて研究しました。その結果、加齢によって眼窩の幅や高さは変わらない一方、上内側と下外側の曲線が変形することを確認しました。骨の選択的な吸収とリモデリングによるものと推測されています。Pessaは、こうした骨と軟部組織の変化は関連しており、目の下の溝や、黒目と下まぶたの間に白目が見える状態を強めると説明しました。
図3.眼窩形状の骨格変化と、眼窩縁インプラントによって若い頃の輪郭を回復した例。出典:Overview of Current Thoughts on Facial Volume and Aging, D. Kahn ほか, September 2010, Medicine Facial plastic surgery : FPS, DOI:10.1055/s-0030-1265024.
Lambrosらは、患者の写真を長年にわたって比較し、上顔面の形の変化を記載しました。眉は少し下がり、上まぶたの最も高い位置は外側へ移動していました。目頭は同じ位置か内側へ動き、目尻も内側へ移動することで、目の横幅が短くなります。ほかにも、こめかみと隣接する目元のくぼみ、額のしわ、上まぶたの下垂、皮膚弛緩などが、加齢変化として挙げられています。
目元の老化では、眉の外側の下垂がよくみられます。側頭部の癒合線の外側では、軟部組織に重力に抗する支えが不足しているためだとする研究があります。一方、加齢によって眉が下がるのではなく、むしろ上がるという報告もあります。その場合は、額の横じわと前頭筋の過剰な働きが伴います。原因としては、後天性眼瞼下垂が現れる前段階、まぶたの腱膜の離開を補うために前頭筋が働き続ける状態、余った皮膚で視野が遮られないよう、眉を常に上げている状態などが考えられます。
加齢による眼瞼下垂は、なぜ起こる?
加齢性の眼瞼下垂は、眼瞼挙筋の離開から生じます。内側の腱膜の弱化、上まぶたの瞼板の外側への偏位、挙筋の脂肪変性などが関わります。従来は、年齢とともに筋肉が緩むと考えられてきました。しかし一部の研究は、眉に関わる筋肉は、土台となるボリュームの移動に適応するため、むしろ安静時の緊張を高めるとしています。
額、こめかみ、中顔面の脂肪は、加齢とともに減少し、下垂します。眼輪筋後方脂肪(ROOF)が減ると、皮膚が余り、たるみます。額の下垂による目尻側のたるみと、涙腺の突出は、はっきり区別する必要があります。眼窩内では、上まぶた内側の脂肪が逆に増える一方、中央の腱膜前脂肪は減少します。下まぶたの脂肪は、年齢とともに増えます。上顔面の老化や治療効果を客観的に評価するため、図4のように、TPS(瞼板部の見える幅)、BFS(眉の脂肪の幅)、MRD(瞳孔中央の光の反射点から上まぶたの縁までの距離)などを測定します。
図4.上:標準化した写真でのBFS、TPS、MRD1の測定例。尺度として角膜径を11.5㎜に設定しています。下:同じ患者で、左眼瞼下垂手術と左右で異なる量の眼瞼形成を行った後。TPSの左右差が改善し、BFSが短くなっています。出典:Cosmetic Outcome of Posterior Approach Ptosis Surgery(An American Ophthalmological Society Thesis), Robert A Goldberg ほか, Trans Am Ophthalmol Soc. 2011 Dec;109:157-167.
額や目元のしわへの治療
ニードルRFは、比較的抑えた出力で多様な効果を得られるため、注目されています。モノポーラRFほどの高出力を必要としないことも特徴です。初めは主にニキビ、毛穴、傷跡に使われていましたが、近年は肝斑などの色素治療にも用いられています。一方、これまでリフトアップへの応用が難しかったのには理由があります。引き上げや引き締めに必要な出力まで上げると、針の周囲が過度に凝固し、表皮への損傷も大きくなってしまうためです。十分な深さまでエネルギーを届けることにも限界がありました。
VIRTUE RFは、サブパルス技術と冷却プレートによって、これらの問題に対応しました。サブパルスを最大10個に分け、過剰な凝固を抑えます。冷却プレートで表皮の損傷を減らせるため、より大きなエネルギーを深い層まで届けられるようになりました。
ニードルRFは、絶縁した微細な針を皮膚に刺し、高周波を届ける方法です。針が小さな孔をつくり、真皮へ直接エネルギーを伝えます。針の間を電流が流れることで組織が温まり、コラーゲン生成と組織の再生が促されます。この仕組みによって、肌のハリや質感の改善を図ります。
VIRTUE RFは、こうした技術をさらに発展させた機器です。最大10個のサブパルスへの分割と冷却プレートによって、従来の治療効果を高め、リフトアップという新たな適応も加わりました。従来の機器との違いは何でしょうか。多くのニードルRFは、単一パルス、または最大5個のパルスを使います。VIRTUE RFは最大10個に分割できるため、より精密かつ効果的に治療し、コラーゲン生成を促して、結果の改善につなげられます。
サブパルスを増やすと、針の周囲の凝固が減り、針と針の間では、壊死に至らない熱刺激が増えます。これがコラーゲン生成を促し、ハリや質感の改善につながります。痛みも抑えられ、患者の負担を軽減できます。過度な熱損傷を防ぐことで、回復期間や副作用も減らせます。つまり、最大10個のサブパルスによって、エネルギーを凝固に使いすぎず、コラーゲン生成に効率よく振り向けられるのです。
冷却プレートは、施術中の熱を管理し、痛みと表皮の損傷を抑えます。そのため、より高い出力を安全に届けられ、回復期間も短縮できます。プレートを当てると皮膚温が一時的に下がり、インピーダンスが上昇します。電流は抵抗の低い経路へ流れるため、高周波が表皮にとどまらず、より深い真皮へ届きやすくなります。エネルギーを深部へ誘導することが、治療効果の向上につながります。
(次号に続く)
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