お腹の施術は脂肪と筋肉の両方にアプローチすべき?(複合的なボディメイク)
雑誌D&PSの2026年3月号に掲載された、私のコラム全文です。
美容医療でボディラインを整えるとき、目指すのは体重を減らすことだけではありません。局所の脂肪を減らし、筋肉を強化することで、腹直筋のシックスパック、腹部の縦線(ABライン、ベストライン)、V字ライン(マーメイドライン)、さらに体全体のバランスまで考えます。非侵襲の機器は、手術よりもダウンタイムや負担を抑える選択肢として発展してきました。今回は脂肪への施術と筋肉トレーニングの併用を中心に、主な方法の仕組みと臨床研究を見ていきます。
お腹の施術では、なぜ脂肪と筋肉の両方に働きかけるのでしょうか?
バランスのよい輪郭を作るには、余分な皮下脂肪を減らすと同時に、土台となる筋肉を育てる必要があります。脂肪が多いと筋肉の線が隠れ、筋肉が少ないと支持力が弱いため、脂肪を減らしても期待した輪郭にならないことがあります。シックスパックは、腹部の脂肪が十分に少なく、腹直筋が発達して初めて見えてきます。腹部の縦線やV字ラインも同じです。
臨床レビューでは、脂肪減少と筋肉刺激を組み合わせるほうが、単独より輪郭を整えやすいとされています。脂肪冷却後に筋肉を対象とする施術を加えた研究でも、併用による変化が報告されています。脇腹や太ももなど落ちにくい脂肪に働きかけながら、筋肉のラインを見せやすくする考え方です。ただし、脂肪の量や分布は性別・年齢で異なるため、一人ひとりに合わせて対象と方法を調整します。
図1.性別・年齢別の体脂肪率の目安。
筋肉の輪郭を見せるには、まず脂肪への対応が必要です。非侵襲の方法には、温度刺激で脂肪細胞のアポトーシスを促すものがあります。脂肪冷却は低温への感受性の差を利用し、温熱による施術は熱で脂肪に働きかけます。近年は、冷却に続いて加温を行う方法も検討されています。低温での結晶化と熱による作用を組み合わせることで効率を高め、冷却後の痛みや不快感を和らげる可能性も提案されています。
脂肪冷却では、お腹の脂肪はどの程度変わるのでしょうか?
本稿で取り上げる脂肪冷却は、脂肪組織を−7℃以下で15分以上冷却し、脂肪細胞の結晶化とアポトーシスを促す方法です。水分の多い皮膚や筋肉との低温への感受性の差を利用します。脂肪組織に炎症反応が生じ、その後2〜3か月かけて徐々にボリュームが減少します。
複数のサイクルを行うと、より多くの脂肪細胞に作用が及び、変化が大きくなるという考え方があります。動物・ヒトの研究で、1回当たり約10〜25%の脂肪層の減少が観察されたという報告もあります。
脂肪冷却は、脇腹、太もも、上腕、あご下などの落ちにくい脂肪を主な対象とし、腹部や脇腹への使用でFDAクリアランスを受けています。基本は低温による脂肪細胞のアポトーシスです。一部の研究では、白色脂肪が代謝の活発な褐色脂肪へ変化する可能性も検討されています。
図2.脂肪冷却によるボディコントゥアリングの仕組み。
臨床データでは、キャリパー測定で14.7〜28.5%、超音波測定で10.3〜25.5%の脂肪減少が報告され、主な有害反応は赤みなどでした。太ももでは厚み約2.8mm、周径0.9cmの減少という報告があります。体の曲面に合わせたアプリケーターの改良も進み、症例報告では1〜2回で上腕、ウエスト、腹部の変化が示されています。また、UCP1などの熱産生に関わる遺伝子を介し、代謝に作用する可能性もあります。血清脂質や肝機能に有意な変化がなかった一方、逆説的脂肪過形成(PAH)の報告もあります。本稿で紹介するデータでは、その頻度は約0.0051%と推定されています。
温熱による脂肪への施術は、どのように働くのでしょうか?
温熱による方法は、脂肪組織を42〜47℃に加温し、熱ショックタンパク質や細胞膜への作用を通してアポトーシスを促します。1060nmのダイオードレーザー、モノポーラRFによる広範囲の加熱、HIFUによる45〜47℃の範囲へのエネルギー集中などがあります。あるレビューではRF後に約20〜30%の脂肪減少が報告され、組織学的にも脂肪細胞のアポトーシスが確認されています。
脂肪冷却の直後に温熱施術を続けることで、相乗効果を得られる可能性も報告されています。低温刺激を受けた脂肪細胞に42〜47℃の熱を加え、変化を促すとともに、冷却後のしびれなどを軽減する考え方です。この順序で行う方法では、周径が約2〜4cm減少したと報告されています。
筋肉を強化する機器は、腹部のラインをどう変えるのでしょうか?
筋肉の強化は脂肪減少を補い、筋肉の張りや輪郭をはっきりさせます。ジムやスポーツなどの能動的な運動は、主に筋力と筋持久力を高めるものです。本稿では、随意収縮で動員される筋線維は約20〜40%とする報告を取り上げています。大腿四頭筋の最大随意収縮でも約30〜40%だったという筋電図研究があり、運動単位の動員の限界という観点から、機器による刺激を考えます。
機器による受動的なトレーニングでは、最大随意収縮を超える収縮(SMC)を起こし、80〜100%の筋線維の動員を目指します。普段使われにくい筋線維を刺激し、その後の能動的な運動を助けるという考え方です。代表例には、高密度焦点式電磁刺激(HIFEM)や、直流を利用する多方向刺激(MDS)などがあります。
図3.HIFEMとRFを使ったボディコントゥアリングの仕組み。
HIFEMは強い電磁場によって運動神経に電流を誘導し、神経筋接合部のアセチルコリン放出を介して強い収縮を起こします。研究では筋線維を最大100%近く動員し、筋肉量が約16〜19%増えたという報告があります。RFを併用すると組織温度が約42℃へ上がり、熱ショックタンパク質が活性化します。筋肥大を助けるとともに、脂肪細胞のアポトーシス、結合組織や皮膚の引き締めにも働きかけます。
カテコールアミンで刺激されたFGF21が熱産生に関わる遺伝子の発現を高め、RFの温熱と相乗的に働くという報告もあります。HIFEMとRFの複合機器は強度を段階的に調整しやすく、初めて施術を受ける方にも取り入れやすいとされています。臨床研究では、腹筋の増加と脂肪の減少が同時に確認されています。
13人に改変したHIFEMの手順を適用した症例集積では、腹直筋の厚みが最終来院時に平均0.29cm(27.8%)増え、3か月後も26.2%の増加を維持しました。皮下脂肪の厚みは3か月後に平均0.53cm(34.0%)減少し、満足度は100%で、有害事象は報告されませんでした。
ほかに、20〜200kHzでキャビテーションを起こす非集束型超音波があります。音波によって微小気泡が生じ、その崩壊が脂肪の乳化や細胞溶解につながる仕組みです。低周波超音波の施術後に、ウエストが約2〜5cm減少したという研究もあります。
PPCとデオキシコール酸の混合製剤による脂肪溶解注射も選択肢で、本稿で紹介する報告の合併症率は約0.076%です。全身振動(WBV)は30〜50Hzの振動で機械的なせん断力を生じさせ、脂肪分解に働きかけるとされています。体外衝撃波(ESWT)も音響パルスによって脂肪細胞を刺激します。また、バイオディーゼルの副産物から得たグリセロール由来ポリマーなど、機器の生体適合性や治療への応用を高める材料の可能性も提案されています。
複数の方法を組み合わせると、相乗効果が期待できます。脂肪冷却とHIFEM・RFを併用し、脂肪を減らしながら筋肉を強化してシックスパックを見せやすくする方法や、冷却・加温にMDSを加え、脂肪細胞への作用と筋線維の動員を高める方法が報告されています。
組み合わせは多様なので、体型、目標、刺激への耐性、施術中の快適さを考えて個別に設計する必要があります。こうした複合的な手順で、単独の方法より約20〜30%よい輪郭形成の結果が得られたという報告もあります。
非侵襲のボディ治療では、脂肪と筋肉の両方を考えることが大切です。脂肪減少と筋肉の強化を組み合わせることが、望む輪郭へ近づくための重要な方針になります。今後は一人ひとりの違いに合った結果を得るために、併用の手順をさらに検討する研究が必要です。
掲載誌面を見る



