顔のたるみはボリュームを補うだけで改善できる?(顔の老化を解剖学から考えるⅡ)

雑誌D&PSの2025年8月号に掲載された、私のコラム全文です。

年齢を重ねた顔を若々しく整える施術や機器は、いずれも加齢による変化に働きかけるために使います。部位ごとに目指す改善は、次のとおりです。

  1. 側頭部:こめかみのくぼみ、目尻の下がり
  2. 頬・眼窩下部:中顔面のくぼみ、目の下のしわ、毛穴
  3. 耳下腺周囲:頬のこけ、マリオネットライン
  4. フェイスライン:下顎の輪郭、頬のたるみ
  5. 頬の下部:下顔面のくぼみ、笑ったときにできるアコーディオン状のしわ
  6. 鼻唇溝周囲:ほうれい線
  7. 口唇・あご周囲:マリオネットライン、口角の下がり

骨・脂肪・筋肉・皮膚では、顔のたるみがどのように進むのでしょうか?

顔の老化は一つの層だけで起こるものではありません。骨格、脂肪パッド、筋肉、真皮やSMAS、表皮などの複数の層で同時に進み、それぞれに特徴的な変化が現れます。

  1. 骨の吸収 :顔の輪郭を支える力が弱くなり、たるみが進みやすくなります。
  2. 深部脂肪パッドの萎縮と下垂 :中顔面のボリュームが減り、くぼみが生じます。
  3. 筋肉の機能の変化 :過剰な緊張によってしわが深くなり、筋力の低下によってたるみが生じます。
  4. SMASと線維性隔壁のコラーゲン減少 :組織の弾力が失われ、たるみやしわが深くなります。
  5. 皮膚の菲薄化、弾力の低下、水分不足 :老化した肌に特徴的な変化で、小じわが増え、肌の質感も粗くなります。

美容医療では、まずボリュームを補おうとすることがあります。しかし、ハリや肌質を整えずにボリュームだけを増やすと、膨らみすぎた不自然な顔になりかねません。特に鼻唇溝脂肪パッドやジョール脂肪パッドは、ボリュームを足すことで顔のバランスを崩しやすい部位です。

額では、主に上へ引き上げる働きをする前頭筋に、加齢による筋肉量の減少が起こります。筋線維の密度や大きさが減り、安静時の緊張も弱まります。前頭筋は眉を持ち上げる唯一の筋肉なので、その力が低下すると、まぶたの下垂や額のしわが目立ちやすくなります。

前頭筋が収縮すると、額の下側の皮膚は頭側へ、上側の皮膚は足側へと動きます。その動きが合流する場所をCライン(line of convergence)と呼びます。額の高さの約61%の位置にあり、上から2本目の横じわに一致します。前頭筋は眉を上げる唯一の筋肉で、眼輪筋、眉毛下制筋、皺眉筋、鼻根筋と拮抗して働きます。骨に付着せず軟部組織の中にあるため、収縮すると上下の端が中央へ近づき、皮膚が両方向に動きます。その結果、下側では眉が上がり、上側では生え際が下がります。

額・目元・中顔面のたるみは、部位ごとにどう治療するのでしょうか?

額

前頭筋と皮膚をつなぐ皮膚支帯が緩むと、額の皮膚の弾力が低下します。上側頭隔膜や帽状腱膜などの支持構造も弱くなり、額の外側と側頭部の連続した支えが損なわれることがあります。眉の中央が重く下がり、眉尻の下垂も生じます。前頭筋がすでに弱っている状態でボツリヌストキシンを長く使用すると、まぶたの下垂がさらに目立つ場合があります。

図1.前頭筋の上下の線維とCラインの位置関係、およびCラインに沿った注入点。出典:Locking the Line of Convergence by Botulinum Toxin Type A for the Treatment of Dynamic Forehead Wrinkles, Yehia F. El-Garemほか, Journal of Cosmetic Dermatology, 2023;22(1):186–192. DOI:10.1111/jocd.15468.

額の機能と構造の老化を改善するには、複数の層に働きかける必要があります。第一に、HIFESを用いる機器などで前頭筋を直接刺激し、筋肉の機能を取り戻す方法です。安静時の緊張を高め、眉を引き上げることを目指します。単にしわを伸ばすのではなく、前頭筋の収縮パターンと、Cラインを中心とした皮膚の双方向の動きを整えることで、自然な構造の改善につなげます。

第二に、皮膚と筋肉の境界にある皮膚支帯や細胞外マトリックス(ECM)には、高周波を中心としたエネルギー機器を使用できます。コラーゲンの再構築とエラスチンの生成を促し、皮膚の弾力を取り戻す方法です。

第三に、側頭部の支持力低下による眉尻の下垂には、側頭部の糸リフトやフィラーなどで、帽状腱膜や浅側頭隔膜につながる支えを補う方法があります。

第四に、額の表面のしわには、ボツリヌストキシンを選択的に少量使用できます。ただし、筋機能の低下やバランスの乱れを考慮し、施術範囲と量を必要最小限にすることが大切です。特に額の上中央部を避け、外側に絞って注入する方法が考えられます。皮膚自体が薄くなっている場合には、スキンブースターで真皮の密度にも働きかける併用治療を勧めます。

額の老化には、前頭筋の機能低下、ECMを介した結び付きの弱まり、側頭部の支持力低下が重なっています。一か所だけを狙うのではなく、筋肉、真皮、支持靭帯、骨膜周囲までを含め、複数の層を考えた治療設計が必要です。

目の周り

目の周囲では、薄い環状の眼輪筋が緊張を保っています。加齢に伴って筋の緊張や厚みが減ると、目の下の袋状のむくみ(フェストゥーン)や眼窩脂肪の突出が目立ちます。眼窩周囲の支持靭帯や眼輪筋支持靭帯(ORL)は脂肪と皮膚を固定していますが、これらが弱まると、ティアトラフや眼瞼頬溝が深くなります。ECMの弾性線維やヒアルロン酸が減ると、皮膚全体のハリも低下します。診療では、目の下の溝が深くなる、涙袋が平坦になる、皮膚が薄くなってくぼむ、といった変化が見られます。

目元の老化には、筋肉の萎縮、靭帯の弱まり、ECMの減少が重なっています。筋肉の活性化、支持靭帯の強化、皮膚の再構築を組み合わせて治療を設計することで、目元のボリュームと自然な表情のバランスを整えます。

眼輪筋が萎縮し、緊張が低下している場合には、HIFESを用いた筋肉刺激機器で、表情筋の安静時の緊張を高める方法があります。特に下まぶたの薄い環状の筋肉を刺激することは、目の下のボリュームを安定させ、脂肪の突出を抑える助けになります。

目の下の皮膚と脂肪を安定してつなぐには、ORLなどの支持靭帯の強化とECMの再構築が必要です。フラクショナルRFや超音波などでコラーゲン生成を促し、弾性線維の再配列や真皮の緻密化を通して、目の下のハリを取り戻します。くぼみや皮膚の薄さには、スキンブースターで真皮の厚みとECM中のヒアルロン酸量に働きかける方法があります。

ティアトラフや眼瞼頬溝が深い場合には、骨膜の上などの深い層、あるいは真皮の下に、弾性率G′の低いフィラーを少量ずつ精密に注入し、くぼみの支えを補う方法があります。ただし、静脈やリンパの流れ、繊細な解剖構造が集まる部位なので、熟練した技術が必要です。フェストゥーンが目立つ場合には、過剰な脂肪の量を調整するアプローチが必要になることもあります。

中顔面

中顔面の骨格は、上顎骨と頬骨で構成されます。深部脂肪には深部内側頬脂肪(DMCF)、眼輪筋下脂肪(SOOF)、頬脂肪体など、浅層脂肪には内側頬脂肪、中間頬脂肪、鼻唇溝脂肪、外側頬脂肪などがあります。支持構造には頬骨靭帯、眼窩周囲の支持靭帯、皮膚と脂肪層をつなぐ皮膚支帯があります。筋肉では眼輪筋、口角を引き上げる大頬骨筋・小頬骨筋、上唇を上げる上唇挙筋(LLS)・上唇鼻翼挙筋(LLSAN)などが関わります。LLSANやLLSが相対的に働きすぎると、ほうれい線が目立つ場合があります。

図2.瞳孔を中心に、時計の文字盤のように位置関係を示した、まぶた周辺の解剖図。ORL:眼窩支持靭帯、ZCL:頬骨皮膚靭帯、SOOF:眼輪筋下脂肪。白い点線はフェストゥーンが形成される範囲、黄色い点線の三角形は上顎骨が吸収される範囲、黄色の3つの楕円はORLより上にある3つの眼窩脂肪パッドを示します。出典: https://plasticsurgerykey.com/contouring-procedures-of-the-face-handling-the-soof-the-nasojugal-fold-and-the-infraorbital-hollowness.

中顔面の加齢変化では、まず骨格が後退し、上顎骨の吸収に伴って前方の支持力が低下します。深部脂肪のSOOFやDMCFが下がると、ティアトラフやほうれい線が深くなります。浅層脂肪の分断や再分布、ボリューム減少も、中顔面のくぼみ、ゴルゴ線、ほうれい線を目立たせます。筋の緊張や表情筋の収縮力が低下すると、口角結節の周囲も下がりやすくなります。靭帯の弾力低下は、頬骨部の膨らみ、フェストゥーン、ジョールにも関わります。診療でよく見られるのは、ほうれい線、目の下の溝、ゴルゴ線、頬のこけや前頬のボリューム減少、口角結節の下垂に伴う口角の下がりなどです。

骨格の後退や中顔面前方のボリューム減少には、上顎骨の骨膜上に高弾性のフィラーを注入し、前方への支持力を補って中顔面の中心構造を整える方法があります。特に眼窩下縁、頬の内側、梨状口周囲の支持を補うと、ティアトラフやほうれい線の間接的な改善にもつながります。SOOFやDMCFの下垂によるボリューム減少には、深部脂肪の区画に沿ったフィラー注入を行います。頬脂肪体が大きく下がっている場合には、RFやHIFUを選択し、脂肪の収縮とコラーゲンのリモデリングを促す方法があります。

浅層脂肪の再分布や分断には、複数の層を使い分けるフィラー注入が必要です。中間層では中程度の弾性率G′の製剤で形を整え、浅い層では柔らかいフィラーやスキンブースターで、皮下の滑らかさとうるおいを補います。解剖学的な危険部位を踏まえて針とカニューレを使い分け、特に眼角動脈や眼窩下孔に注意する必要があります。

筋肉の機能や緊張が低下している場合には、筋肉刺激機器で大頬骨筋、小頬骨筋、上唇挙筋、笑筋などの安静時の緊張を高め、働きを取り戻す方法があります。ボリュームを補うだけでなく、表情の動く方向や口角の引き上げにも働きかける、構造に着目したアプローチです。

支持靭帯の弱まりによる頬骨部の膨らみやゴルゴ線には、糸リフトなどで皮膚の固定力を補う方法があります。特に頬骨靭帯や眼窩周囲の支持靭帯に沿って、引き上げる方向を設計することが重要です。

中顔面のECMが全体的に弱っている場合には、RFやフラクショナルマイクロニードル機器による真皮への刺激が重要です。コラーゲン生成とエラスチンの回復を促し、皮膚のハリや密度の改善を目指します。

図3.中顔面の評価に用いる位置の目印を左半顔に示しています。頬骨部赤道線(ME)、内側垂直基準線(MVR)、外側垂直基準線(LVR)、下頬骨部区画(LMP)、上頬骨部区画(UMP)、眼窩下縁を含みます。出典:Pertinent Anatomy and Analysis for Midface Volumizing Procedures, C. Surekほか, Plast Reconstr Surg. 2015 May;135(5):818e-829e, doi:10.1097/PRS.0000000000001226.

中顔面は、一つの施術だけでは改善に限界があります。骨格、脂肪、筋肉、皮膚、靭帯を合わせて治療を設計する必要があります。骨格の形、脂肪の移動のパターン、筋肉の働きといった一人ひとりの解剖学的特徴に合わせることで、ボリュームの回復と自然な表情の改善を両立しやすくなります。

(次号に続く)

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D&PS 2025年8月号 チョ・チャンファン院長のコラム 1
D&PS 2025年8月号 チョ・チャンファン院長のコラム 2
D&PS 2025年8月号 チョ・チャンファン院長のコラム 3

執筆:ドンアン中心クリニック 医師

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