二の腕の脂肪とたるみ、施術でどう改善する?(上腕の美容医療)
雑誌D&PSの2026年8月号に掲載された、私のコラム全文です。
理想的な腕のラインとは
上腕はノースリーブでそのまま見える部位で、全身のシルエットの調和に関わります。理想は、細すぎて貧弱に見えず、ハリがあり、余分な脂肪のないなめらかな形です。解剖学的には、上腕三頭筋の部分がたるまず、二頭筋との境界が強く出ずに緩やかにつながる腕が美しいとされます。韓国でも以前は極端に細い腕が好まれましたが、現在は細さと適度な筋肉のラインを備え、揺れずに引き締まった腕が美しいという見方が一般的です。
女性の上腕中央部の周囲径は平均30〜32cmで、美容的には25〜30cmが好まれる傾向があります。35cm以上では相対的に太く、25cm未満では細すぎて貧弱に見える場合があります。上腕中央の周囲径が肩関節周囲径の約75%ならすっきり見えます。また、上腕から肘へ円錐状に徐々に細くなり、肘の周囲径が上腕の約60%になると、バランスがよく見えます。
東洋でも西洋でも、たるみのないハリのある腕が好まれます。西洋では適度な筋肉のラインが健康的と評価され、東洋でも最近は、極端な細さよりすっきりしたハリが重視されています。ただし、筋肉が過度に発達したボディビルダーのような腕は、女性らしさを強調する目標とは異なります。施術者は体格、脂肪分布、皮膚の状態を丁寧に評価し、体幹と調和する腕の太さを計画する必要があります。腕の長さ、肩との比率、身長に対する比率も考慮します。
図1.腕の筋肉。
二の腕の脂肪やたるみはなぜ生じるのか
上腕には、上腕二頭筋、上腕筋、上腕三頭筋があります。三頭筋は腕の後面にある、肘を伸ばす主な筋肉で、いわゆる二の腕の脂肪のすぐ下に位置します。この部位は皮下脂肪と軟部組織の割合が比較的高く、リンパや静脈の流れが滞りやすい人では、脂肪の蓄積や皮膚のたるみが起こりやすくなります。
上腕の美容で中心となるのは、皮下脂肪の厚さと皮膚のハリです。女性は上腕の後面に脂肪がつきやすく、加齢や体重変化でハリが落ちると、腕を振ったときに揺れる「バットウイング」が目立ちます。やせていても二の腕だけが目立つことは多く、西洋の中年女性にもよくある悩みです。輪郭の崩れには脂肪だけでなく、三頭筋の緊張や筋膜の支持力の低下も関わります。長時間のパソコン作業や姿勢の偏りで後面の筋肉が緊張しすぎたり、肥大や不均衡があったりすると、皮下組織が押し下げられて輪郭が曖昧になることがあります。
上腕の内側でたるみが目立つ理由
上腕内側は、表皮、真皮、皮下脂肪が体の中でも薄い部位の一つです。真皮が薄いほど、コラーゲンやエラスチンの減少によるハリの低下が、ちりめん状の小じわ、いわゆるcrepey skinとして早く現れます。コラーゲンは20代半ばから減り始めます。体重の増減による皮膚の伸縮、遺伝・ホルモン、紫外線による光老化、さらに上腕後面を支える真の支持靭帯がないことも関わります。上腕のたるみは、脂肪、筋肉、真皮、筋膜にまたがる問題です。一つの方法だけでなく、各層を組み合わせて治療することが仕上がりを左右します。
図2.上腕後面のボリュームを左右する主な筋肉、上腕三頭筋の位置と走行。
二の腕へのボツリヌストキシン注射でラインを整える
三頭筋の過緊張がある場合は、ボツリヌストキシンで緩め、脂肪吸引や高周波による引き締めを併用して筋肉と皮膚の均衡を整えることで、美容的な改善が期待できます。特に、運動で腕の筋肉が目立ちすぎる女性では、筋肉を緩めてラインを整えられます。
女性では二頭筋が過度に大きくなることは少なく、ライン調整の中心は三頭筋です。上腕後面の厚みを決め、その緊張と厚さが腕の太さの印象に直接関わります。前面の二頭筋は、力こぶが発達しすぎないほうが女性的な印象に合います。軽い負荷を繰り返す運動でラインを維持し、必要以上に筋肉を大きくする運動は避けることが勧められます。
主に三頭筋の外側頭を対象に、筋腹へ約2cm間隔で15〜20か所に分けて注入します。無理に腕を細くするのではなく、筋緊張や形を微調整して自然な輪郭を作ることが目的です。多くは50単位以上でも不快感はありませんが、筋力の弱い患者では、腕を上げる際の疲れや軽い不快感を覚える場合があります。筋肉の発達と活動量に合わせて、用量を調整する必要があります。
2〜3週間ほどで徐々に効果が現れます。三頭筋の過緊張が和らぐことで、腕の周囲径は平均1〜2cmほど減少し、皮膚表面がなめらかになり、揺れも少なくなります。
PLLA・CaHAによる上腕の皮膚のたるみ治療
上腕内側のちりめんじわや軽度から中等度のたるみには、物理的に引くより、真皮の下の支持構造を作り直す方法が合理的です。注入型コラーゲンスティミュレーターは、真皮のリモデリングを刺激し、新しいコラーゲンやエラスチンの形成を促します。そのため、ボリュームを増やさずに、皮膚の厚さ、ハリ、キメを整えられます。
上腕で臨床的な根拠が蓄積している主な製剤は、PLLA(ポリL乳酸)とCaHA(カルシウムハイドロキシアパタイト)です。国際的なレビューでも、どちらも顔以外の部位で真皮の再構築と皮膚の引き締めを促せるため、上腕に適すると評価されています。
PLLA
PLLAは生体適合性と生分解性を備えた物質です。注入した微粒子が穏やかな刺激となって線維芽細胞を活性化し、数週間かけて新しいコラーゲンを作ります。その線維が真皮の下に丈夫な支持構造を形成し、治療部位が徐々にふっくらと引き締まります。吸収性縫合糸や整形外科用インプラントなどに長く使われ、安全性も確立されています。
PLLAが上腕内側のたるみに有効という報告があります。ちりめんじわとたるみを対象とした左右比較のランダム化試験(NCT05445661)では、1バイアルを16mLに希釈し、1か月おきに計3回注入する方法で、安全性、有効性、満足度を評価しました。臀部、大腿、デコルテ、上腕など、顔以外への使用に関する国際的な合意でも、皮膚のたるみ改善に推奨されています。
PLLAは必ず筋肉より浅い皮下層へ注入します。神経と血管が集まるいわゆる「危険三角」を正確に確認して避け、扇状に広げるファニングで均一に分布させた後、十分にマッサージします。結節を防ぐには、適切な希釈、注入深度、施術後のマッサージの原則を守る必要があります。
| 項目 | PLLA | 希釈・高希釈CaHA |
|---|---|---|
| 主な作用 | 線維芽細胞を刺激し、時間をかけてコラーゲンを新生 | 生物学的刺激+ボリューム補充(未希釈の場合) |
| 上腕での適応 | 内側のちりめんじわ、軽度〜中等度のたるみ | ちりめんじわ、軽度〜中等度のたるみ、引き締め |
| 注入する層 | 筋肉より浅い皮下層 | 真皮下へ薄く分布させる |
| 施術間隔・回数 | 1か月おきに2〜3回 | 4〜6週間隔、その後メンテナンス |
| 効果が現れる時期 | 数週間〜数か月かけて徐々に | 直後の刺激+数か月のリモデリング |
| 施術後 | 十分なマッサージが必要 | MFU-V後の施術で相乗効果 |
表1.PLLAとCaHAの比較。
CaHA
レディエッセは、粒径25〜45μmの合成CaHA微粒子約30%を、カルボキシメチルセルロース(CMC)の水性ジェル約70%に懸濁させた製剤です。未希釈では粘度が高く、ボリュームを補うために使用します。希釈・高希釈では直接的なボリューム効果がほぼ0に近づき、広く薄く分布して、新しいコラーゲンとエラスチンの形成を促す生物学的刺激が主な作用になります。注入した組織では、リンパ球の浸潤を伴わず1型コラーゲン優位の反応が起こり、切らない引き締め治療に適しています。
上腕のたるみには、通常1:1の希釈、または1:2の高希釈を用います。生理食塩水やリドカインで薄め、皮下層へ薄く広げるように注入します。高希釈でも、真皮を刺激して新しいコラーゲンを作る作用は保たれます。文献には、1:6まで希釈しても線維芽細胞・組織球の反応が続くとの報告があります。首、デコルテ、膝上、臀部などと同じ原理で、上腕のちりめんじわにも使用します。
超音波と高希釈CaHAの併用
上腕のたるみを対象に、画像で確認できるマイクロフォーカス超音波(MFU-V)と、希釈または高希釈CaHAを同日に併用した前向きパイロット研究があります。キュートメーターで測定した客観的な皮膚物性と、主観的評価の両方が有意に改善しました。4.0MHz・深さ4.5mmと、7.0MHz・深さ3.0mmのトランスデューサーで先にMFU-Vを行い、その後、1:1または1:2に希釈したCaHAを皮下に注入しました。
複数のコンセンサスやパイロット研究も、同日併用ではMFU-Vを先に行い、その後CaHAを注入するよう勧めています。超音波の熱で深い支持層を収縮させた後、生物学的刺激で真皮の再構築を加えることで、作用が補完し合うためです。低用量のボツリヌストキシンを併用すると、表層の筋膜の緊張が緩み、真皮から皮下へ熱がより均一に伝わることも期待できます。
二の腕の脂肪とたるみに使うエネルギーデバイス
皮膚のハリが低下した場合は、高周波(RF)、超音波(US)、レーザー補助脂肪融解(LAL)などで収縮を促します。軽いたるみには、RF、US、レーザー、糸リフトなどの切らない引き締め治療を補助的に使用できます。上腕は皮膚と脂肪の比率が低く、精密な操作が必要なため、機器の選択とエネルギーを届ける深さが、安全性と結果を左右します。
高周波による引き締め
モノポーラ、バイポーラ、マルチポーラRFやフラクショナルRFは、真皮のコラーゲンを直後に収縮させ、その後も新しいコラーゲンが作られるよう促します。軽度から中等度のたるみに適した切らない方法で、徐々に自然な改善を目指します。
マイクロニードルRFは、細い針から真皮内へ熱を届け、コラーゲンとエラスチンの新生を促します。表皮の損傷を抑えながら真皮を再構築し、深さも精密に調整できるため、皮膚と脂肪の比率が低い上腕でよく選ばれます。ちりめんじわや軽いたるみに向いています。
高周波補助脂肪吸引(RFAL)は、上腕の輪郭形成で比較的根拠の水準が高い方法です。120名を対象とした前向き研究では、6か月後に上腕周囲径が平均3.75cm減少し、満足度は35%から87%へ上昇しました。上腕形成術へ移行した例はありませんでした。脂肪量やたるみの程度にかかわらず、多くの患者を皮膚切除なしで治療できる点が強みです。
超音波による引き締め
MFU-Vは、4.0MHz・深さ4.5mmと、7.0MHz・深さ3.0mmのトランスデューサーで熱凝固点を作り、SMASと真皮の収縮、コラーゲン新生を促します。前述のように、高希釈CaHAと併用する際は、MFU-Vを先、CaHAを後にすることで、客観的・主観的な改善が期待できます。HIFUも、異なる深さを対象に、脂肪とたるみを同時に改善する併用治療に使われます。
レーザー・脂肪減少の機器
レーザー補助脂肪融解は、光ファイバーから皮下脂肪層へエネルギーを届け、脂肪を破壊しながら組織を収縮させます。両方の作用が上腕の輪郭形成に適し、特に真皮のハリが低い軽度から中等度のたるみで、吸引だけでは不足する部分を補います。メタ解析では、吸引を併用したかどうかによる周囲径の減少を、定量的に検討しています。
脂肪冷却は脂肪細胞を選択的に冷やして減らし、1回で脂肪層の厚さを平均20〜25%減少させます。ただし、つまめる局所脂肪に適した方法で、たるんだ皮膚自体を引き上げるものではありません。皮膚のたるみが明らかな上腕では、単独使用を避けるほうがよいでしょう。
デオキシコール酸による脂肪溶解注射は、小さな局所脂肪に使用できますが、上腕は神経や血管が近いため、慎重な適応判断が必要です。
併用治療の原則
上腕のたるみには複数の層が関わるため、併用が基本になることが多くあります。皮膚のたるみにはRF、マイクロニードルRF、MFU-Vとコラーゲンスティミュレーターを使い、局所脂肪には脂肪冷却やLALを検討します。脂肪とたるみがともにある場合は、RFと脂肪冷却、または超音波とレーザーを組み合わせ、異なる深さに同時に働きかけます。軽度から中等度のたるみで、ハリが保たれ、脂肪が過剰でないなど適応を満たせば、切らない方法で約15〜30%の改善が可能です。ただし、大幅な減量後に皮膚が多く余った場合は、上腕形成術が最も確実です。
二の腕の脂肪吸引や手術が必要になる場合
皮膚のたるみが強い場合は、上腕形成術を検討します。腋窩や上腕内側を切開し、余った皮膚と皮下脂肪を切除して引き上げる方法です。傷跡は避けられませんが、LALや高周波を併用することで、瘢痕を抑え、収縮を助けられます。RFALなどは皮膚切除を伴う手術の代替となり、多くの患者で、皮膚を切除せず明らかな収縮が得られます。
腋窩の組織と神経の温存
腋窩にはリンパ節、血管、神経が集まるため、長胸神経と腋窩神経を温存し、過度な剥離を避けることが重要です。吸引や剥離が過剰だと、リンパ浮腫のリスクが高まります。浅い層を中心に吸引し、カニューレを慎重に操作する必要があります。熟練した手技によって安全性を確保します。腋窩のラインがなめらかになると、腕と胸の境界が整い、上半身のシルエットが明瞭になります。
上腕後面・腋窩・副乳を一体として整える
脂肪吸引では、脂肪の減少とハリの改善が中心となります。二の腕の脂肪だけを取ると、腋窩が目立ったり、脂肪がそちらへ押されて腕と体幹の境界が曖昧になったりする場合があります。上腕後面、腋窩、副乳をまとめて扱うと、肩から腕へまっすぐなラインを作りやすくなります。西洋でも、ブラ周囲のふくらみを改善する際は、この一体的な方法が主流です。胸が小さい女性は腋窩の前面が目立ちやすく、局所脂肪吸引で整えます。
若く、皮膚に弾力があり、脂肪だけが多い場合は、上腕と腋窩を一緒に吸引し、全体の周囲径を減らして肩から腕をすっきり整えられます。副乳があれば切除や吸引を併用し、平らにします。脂肪吸引後に筋層の収縮が不均一な場合は、少量のボツリヌストキシンで緊張を和らげると、表面の凹凸や残ったこわばりを軽減できます。
腋窩・胸の側面のラインを整える
腋窩から胸の側面は、腕の輪郭と密接につながっています。理想的な腋窩は、突出やくぼみがなく平らで、正面から見た胸の側面と腕の境界がなめらかに一直線となる形です。やせすぎるとくぼんで貧弱に、ふくらむと上半身が厚く見えます。腋窩の前方は、大胸筋と広背筋につながる領域で、脂肪が多いとノースリーブやブラジャーを着た際に折れ目が生じます。
腋窩の脂肪は、上腕の脂肪吸引と併せて整えます。副乳のように乳腺組織があると、触れたときにしこりを感じます。必要に応じて腋窩から切除し、切開はしわに沿って入れて目立ちにくくします。切除と周囲の吸引を組み合わせることで、より平らに整えられます。
西洋でも近年、腋窩のふくらみへの関心が高まり、局所麻酔下の脂肪吸引で整える傾向があります。回復が早く、傷跡の負担が少ないことから、満足度の高い方法です。
| 主な問題・重症度 | 第一に検討する方法 | 補助・併用治療 |
|---|---|---|
| ちりめんじわ・軽いたるみ | マイクロニードルRFまたはMFU-V、コラーゲンスティミュレーター(PLLA・高希釈CaHA) | レチノール・尿素の外用、低用量ボツリヌストキシン |
| 局所脂肪(ハリが保たれている) | 脂肪冷却またはLAL | RFによる引き締めを併用 |
| 脂肪+中等度のたるみ | RFAL(BODYTITE)、または脂肪吸引+RF・USによる引き締め | ボツリヌストキシンによる三頭筋の調整、腋窩も一体的に治療 |
| 三頭筋の過緊張・厚み | ボツリヌストキシン(外側頭へ分散注入) | 引き締め・脂肪吸引の併用 |
| 大量減量後の著しい余剰皮膚 | 上腕形成術 | RFAL・LALで瘢痕と収縮を補う |
表2.上腕の美容治療における、主な問題と重症度別の治療法・併用方針。
たるみの程度に応じた治療の選択
上腕は真皮が薄く、神経、血管、リンパが集まる部位です。薄い層をどれだけ正確な深さで扱い、複数の方法をどう組み合わせるかが、安全性と仕上がりを左右します。脂肪、皮膚のハリ、筋緊張の3つを評価し、重症度に応じて方法を選ぶことが中心です。コラーゲンスティミュレーターで真皮を再構築し、機器で引き締め、脂肪吸引や手術でボリュームと余剰皮膚を調整します。それぞれの作用を補い合うよう計画することで、自然で均整の取れた腕のラインを目指せます。
(次号に続く)
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