なぜ特定の部位に脂肪がつく?(ボディメイクと脂肪代謝)
雑誌D&PSの2025年11月号に掲載された、私のコラムの要点です。
「部分肥満」は、なぜ医学的に正確な表現ではないのでしょうか?

「部分肥満」は、厳密には医学的に正確な表現ではありません。肥満は、全身のエネルギーバランスの乱れや代謝異常を含む疾患の概念だからです。特定の部位に脂肪がたまっている状態は、「局所的な脂肪蓄積(localized fat accumulation)」や「セルライト(cellulite)」として捉えるほうが適切です。
セルライトは、皮下脂肪の慢性的な蓄積に、結合組織の線維化、むくみ、微小循環の障害が重なる複合的な変化です。脂肪細胞の肥大から微小循環障害、コラーゲン線維の変性・線維化、皮膚のくぼみ、慢性炎症とむくみへと進みます。
一般的な減量や食事・運動療法だけでは、局所的な脂肪やセルライトへの対応が難しい場合があります。そこで近年は、手術をしない施術を中心としたボディコントゥアリング、すなわちボディラインを整える治療が発展してきました。
体の中では、どのように脂肪が分解されるのでしょうか?
私は「肥満は医学的な疾患であり、ボディラインの治療は見た目の満足度のために選ぶ治療」と区別しています。脂肪細胞の生理的な働きや、性別・部位による脂肪のつき方の違いを踏まえ、体系的に施術を考えることが大切です。
脂肪代謝には、ノルアドレナリン、アドレナリン、ACTH、グルカゴン、甲状腺ホルモンなどが関わります。中心となるのは、βアドレナリン受容体の活性化から、環状AMP、プロテインキナーゼ、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)へと続く経路です。これにより中性脂肪がグリセロールと遊離脂肪酸(FFA)に分解され、エネルギーの供給に使われます。
お腹や太ももへの脂肪のつき方は、なぜ男女で違うのでしょうか?
男性では腹部脂肪の分解効率が高く、女性では脂肪分解を抑えるα₂アドレナリン受容体への感受性が高いため、お尻や太ももに脂肪がたまりやすくなります。このような受容体の密度や親和性の違いが、体型の特徴を決める重要な要素だと考えています。
ボディラインの治療の目的は、単に脂肪を取り除くことではありません。私は、組織の代謝を促し、脂肪細胞の機能を整え、バランスのよい輪郭を作り直すことと捉えています。そのためには、肥満、セルライト、局所脂肪の病態を理解し、総合的に治療する必要があります。
